工場や業務用施設の空調更新を検討する際、多くの方が「EHP(電気ヒートポンプ)」と「GHP(ガスヒートポンプ)」の選択に悩みます。動力源が違うこの2つの方式は、導入コストからランニングコスト、CO₂排出量に至るまで、比較すべき点が多岐にわたります。
本記事では、EHPとGHPの仕組みから具体的な性能差、コスト構造の違いまでを徹底比較。さらに、CO₂排出量や補助金といった現代的な視点も交え、TCO(総保有コスト)と使用環境に基づいた「失敗しない選び方」を解説します。
EHPとGHPの基本:仕組みと特徴の違い
EHPとGHPは、どちらもヒートポンプ技術を利用した空調システムですが、コンプレッサーを動かす動力源が異なります。まずは、それぞれの基本的な仕組みと特徴を理解しましょう。
EHP(Electric Heat Pump:電気ヒートポンプ)
EHPは、電動モーターでコンプレッサーを駆動し、冷媒を循環させて冷暖房を行います。近年の技術革新により、消費電力の5倍以上の熱エネルギーを生み出す高効率な機種も登場しています。
- 主な特徴
- コンパクト・軽量: 設置の自由度が高い。
- シンプルな構造: 部品が少なく、メンテナンスが比較的容易。
- 安定した電力供給: 系統電力の信頼性が高いエリアで強みを発揮。
- 注意点: 寒冷地では、暖房時に霜取り運転が必要となり、一時的に能力が低下することがあります。
GHP(Gas Heat Pump:ガスヒートポンプ)
GHPは、都市ガスやLPガスを燃料とするガスエンジンでコンプレッサーを動かします。自動車のエンジンと似た仕組みで、その際に発生する排熱を暖房に有効活用できるのが大きな特長です。
- 主な特徴
- パワフルな暖房: エンジン排熱を利用するため暖房の立ち上がりが速く、霜取り運転が不要で、特に冬場に安定した性能を発揮します。
- 電力デマンドカット: 消費電力が少ないため、施設の契約電力を抑える効果が期待できます。
- 注意点: エンジンを搭載するため本体が重く、設置に広いスペースが必要です。また、エンジンオイルや冷却水などの定期的なメンテナンスが欠かせません。
【項目別】工場空調におけるEHPとGHPの性能・コスト比較
次に、工場などの産業用途で重要となる「初期費用」「性能」「ランニングコスト」といった観点から、両者の違いを具体的に見ていきましょう。
1. 初期費用と設置性
- EHP: 本体価格が比較的安価な傾向にあり、初期費用を抑えやすいのが魅力です。また、GHPに比べて軽量・コンパクトなため、設置場所の制約が少なく、既存施設への導入も容易です。
- GHP: エンジンを搭載する分、本体価格は高めです。機器が重く、大型になるため、設置場所の確保や、建物の耐荷重の確認が必要になる場合があります。
2. 暖房性能
- EHP: 近年はCOP(成績係数)5.0を超える高効率機も多く、省エネ性能は非常に高いです。ただし、外気温が低い環境下では霜取り運転で暖房が一時停止するため、寒冷地での使用には注意が必要です。
- GHP: 霜取り運転が不要で、外気温に左右されにくい安定した暖房が可能です。エンジン排熱を有効活用できるため、特に寒冷地や天井の高い大空間の暖房を得意とします。
3. ランニングコストとメンテナンス
- EHP: 電力消費が大きいため、特に夏場や冬場のピーク時に最大デマンド(瞬間最大電力)が上がり、電気の基本料金が高くなる可能性があります。一方で、構造がシンプルなため定期的な部品交換は少なく、保守費用は軽微です。
- GHP: ガスを主動力源とするため、電力消費を大幅に抑制でき、電気の基本料金削減に繋がります。しかし、エンジンを維持するためにオイル、点火プラグ、フィルター等の定期的な部品交換が必要で、メンテナンスコストが継続的に発生します。特に設置から13年を超えると、高額な修理や部品供給停止のリスクも考慮する必要があります。
4. BCP(事業継続計画)と停電時の対応
- EHP: 安定した系統電力を使用するため、災害後の復旧が早い傾向にあり、BCPの観点で優位です。
- GHP: 運転には外部電源が必要なため停電時には停止しますが、電力への依存度が低いためエネルギー源の分散に繋がり、BCP対策として評価される側面もあります。一部の機種には発電機能を備え、非常用電源として活用できるものもあります。
あなたの施設に最適なのはどっち?ケース別・選定のポイント
「初期費用が安いから」「暖房が強そうだから」といったイメージだけで選ぶと、後悔に繋がることも。自社の状況に合わせた最適な選択をするための判断基準をご紹介します。
EHPがおすすめのケース
✅ 導入時の初期費用を最優先で抑えたい
✅ 温暖な地域にあり、冬場の強力な暖房をそれほど重視しない
✅ 設置スペースが限られている、または屋上設置などで軽量性が求められる
✅ ガス配管の敷設が困難、あるいは高コストになる
✅ 空調以外の電力使用量が少なく、デマンド上昇のリスクが低い施設
GHPがおすすめのケース
✅ 電力デマンドを下げ、電気の基本料金を確実に削減したい(特に高圧受電の工場や大規模施設)
✅ 寒冷地や、天井が高く暖まりにくい大空間で、冬場の安定した暖房能力が不可欠
✅ BCP対策として、エネルギー源を電気だけに依存したくない
✅ 学校や病院など、空調を長時間・広範囲で使用し、ランニングコストを重視する
最終的な判断を下すには、初期費用だけでなく、運転コスト、保守費用を含めたTCO(総保有コスト)で比較することが不可欠です。専門業者による現場調査や光熱費のシミュレーションを通じて、自社にとって最も経済的な選択肢を見極めましょう。
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EHPとGHP、どちらが自社の工場や施設にとって本当に最適かを見極めるには、専門的な知識と多角的な視点が必要です。
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