工場の暑さ対策は、作業環境の改善、省エネ、生産性向上において極めて重要です。本コラムでは、遮熱塗料、遮熱シート、遮熱フィルムの3つの主要な遮熱対策に焦点を当て、それぞれの効果と具体的な活用事例を詳しく解説します。
遮熱塗料
遮熱塗料は、屋根や外壁に塗布することで、太陽光の反射率を高め、建物内部への熱の侵入を抑制します。特に、酸化チタン(TiO₂)を含む塗料は、高い反射率と放射率を持ち、屋根表面温度を約10℃低減させる効果が期待できます。
期待できる効果
- 屋根表面温度の低減:遮熱塗料の塗布により、屋根の表面温度が平均16.1℃低下した事例があります。
- 室内温度の低減:屋根の温度低下に伴い、室内温度も平均8.5℃低減され、快適な作業環境の実現に寄与します。
メリット
遮熱塗料は、広範囲に適用可能で、耐久性が高いのが大きな利点です。特に、屋根や壁の塗装と同時に施工できるため、追加の工事費を抑えながら暑さ対策を行えます。また、一度塗布すると長期間にわたり効果が持続するため、定期的なメンテナンスの手間を減らせるというメリットもあります。
デメリット
一方で、遮熱塗料は初期コストが高めであり、施工のために工場の稼働を一時的に止める必要がある場合もあります。また、長期間の使用によって塗膜が劣化すると、遮熱効果が低下するため、定期的なメンテナンスや再塗装が必要になる可能性があります。
遮熱シート
遮熱シートは、アルミニウムなどの高反射素材を使用し、熱源からの放熱を抑制するために設計されています。ボイラーや炉などの高温設備に直接貼り付けることで、周辺温度を下げ、作業環境を改善します。
期待できる効果例
- 熱源からの放熱抑制:高温設備に遮熱シートを適用することで、表面温度が54.2℃から28.9℃に低下し、25%の省エネを実現した事例があります。
- 室内温度の低減:屋根に遮熱シートを施工することで、屋根裏温度を15℃以上低減し、室内の温度上昇を防ぎます。
メリット
遮熱シートは、局所的な熱源対策に特に有効です。例えば、ボイラーや電気炉など、特定の熱源からの放熱を防ぐことで、工場内の温度上昇を抑えます。また、施工が比較的簡単で、後付けが可能なため、大規模な工事を行わずに暑さ対策を実施できます。
デメリット
一方で、遮熱シートは広範囲の施工には時間と労力がかかるため、大規模な工場全体に適用するにはコストが高くなる可能性があります。
遮熱フィルム
遮熱フィルムは、窓ガラスに貼ることで太陽光の赤外線を反射し、室内への熱の侵入を抑制します。特殊な透明ナノハイブリッド多層膜フィルムを使用することで、採光性を維持しつつ、効果的な遮熱が可能です。
期待できる効果
- 室内温度の低減:フィルムを貼った部屋では、室温が最大6℃低下する事例があります。
- 空調効率の向上:熱の侵入を抑えることで、空調設備のエネルギー消費を削減します。
- 紫外線カット:有害な紫外線を遮断し、室内の家具や設備の劣化を防ぎます。
メリット
遮熱フィルムの最大のメリットは、窓からの熱侵入を効果的に抑制できることです。また、既存の窓に簡単に施工でき、採光性を維持しながら熱対策が可能なため、明るい作業環境を保ちつつ暑さを軽減できます。
デメリット
ただし、遮熱フィルムには熱割れのリスクがあり、ガラスの種類によっては適用が難しい場合があります。また、熱割れシミュレーションの結果、熱割れを回避するために外張り施工した場合には、定期的な張替えが必要となる場合があります。一般的には5年~7年程度の交換が必要と言われております。(条件による)
その他の暑さ対策
遮熱対策に加え、以下の方法を組み合わせることで、より効果的な暑さ対策が可能です。
- 換気システムの最適化:熱気や蒸気を効率的に排出し、室内温度の上昇を抑制します。
- 断熱・防水・補修:スレート屋根に特殊な樹脂を塗布することで、断熱効果や防水性を高め、雨漏り対策にもなります。
- 空調効率の改善
空調設備の効率を最大化するため、以下のような対策が推奨されます。
- 定期的な清掃とメンテナンス: フィルターや内部の清掃を行うことで、空調機の冷却効率を維持。
- サーキュレーターの活用: 冷気や温風を効率的に循環させることで、エネルギーコストを削減。
- スポットクーラーの導入: 局所的な暑さ対策として、作業者の快適性を向上させる手段として有効。
暑さ対策のまとめ
工場の暑さ対策は、作業環境の改善だけでなく、省エネや生産性向上の観点からも重要です。特に、遮熱塗料、遮熱シート、遮熱フィルムなどの遮熱対策は、高い効果を発揮し、空調負荷の低減にも貢献します。
それぞれの対策の特徴を以下にまとめます。
対策 | 期待される効果 | メリット | デメリット |
遮熱塗料 | 屋根・外壁の温度低減、室内温度の抑制 | 広範囲に適用可能、耐久性が高い | 初期コストが高い、メンテナンスが必要 |
遮熱シート | 熱源からの放熱抑制、局所的な温度低減 | 施工が容易、後付け可能 | 広範囲の施工はコストがかかる |
遮熱フィルム | 窓からの熱侵入抑制、紫外線カット | 採光性を維持しつつ遮熱、比較的手軽に施工可能 | 熱割れのリスク、定期的な交換が必要 |
加えて、換気・排熱、断熱・防水、熱源対策、空調効率の改善といった対策を組み合わせることで、より効果的な暑さ対策が実現できます。
工場の特性や課題に応じて最適な方法を選択し、快適な作業環境を実現しましょう。
5. 徳島県省エネIoT環境改善.comが対応した暑さ対策事例
①電気炉に貼り付けて放熱温度が54℃から29℃に!
周辺温度3℃低減で電気炉25%省エネ
施工事例1
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電気炉の放熱温度を29℃までに低減し、作業員からは暑さが改善されたと非常に喜んでいただきました。 さらに、熱効率も向上し、25%の省エネにも貢献しました。 |
②蒸気を使用している殺菌器の放熱を抑制!
作業環境を改善し、殺菌器の保温&省エネを実現
施工事例2
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放熱温度が100℃近くあったものを40℃以下にまで下げることができ、作業環境が大幅に改善されました。 さらに無駄な放熱を抑制することで殺菌器の保温・省エネにつながりました。 |
③成形機のヒーターの放熱を抑え、作業場の暑さ軽減!
20%の省エネも同時に実現
施工事例3
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ヒーターからの放熱温度を100℃からなんと25℃にまで下げました。 金型からの放熱を抑制して、20%の省エネも実現しました。 |
④倉庫の屋根裏に遮熱シートを施工!
倉庫の室温を40℃以上から35℃に改善
施工事例4
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昨年まで倉庫の室温が40℃を超えていたのが、遮熱シートを屋根裏に施工したことで35℃にまで抑えることができました。 |
⑤スレート屋根に遮熱塗装!
屋根裏の温度差12.1℃、天井裏の空間温度差8℃を実現!
施工事例5
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屋根係数を入れて1,200㎡の塗装面積に対して、遮熱塗装を実施。効果検証として、同じ気温下でほぼ同様な建屋の屋根との比較で、屋根裏の温度差12.1℃、天井裏の空間温度差8℃とかなりの遮熱効果があることが実証できました。また、防爆工場の中で働いてる従業員様からも「体感としても3℃~5℃から低減され、改善できています」とのことでお喜びの声をいただきました。 |
6.徳島県省エネIoT環境改善.comの工場/倉庫 暑さ対策ソリューション4選
屋根に塗るだけで屋根表面を10℃程度低減する遮熱塗料
中空セラミックバルーンと特殊顔料の相乗効果によって、
太陽光を効果的に反射します。( 特に近赤外線領域 )
中空セラミックバルーンが塗膜の熱伝導率を低くし、
かつ、長波放射率を高めます。
貼るだけで暑さ対策&空調省エネできる遮熱シート
特殊な透明ナノハイブリッド多層膜フィルムです。
晴だけで窓から侵入してくる太陽光の赤外線や、
高温になる設備など熱源の放熱(輻射熱)を反射します。
遮熱シートのさらに詳しい説明や実際の事例はこちら
強力な送風で冷風の送り出し&熱源の効率的な排気を実現!
空調機器の送風口 前方に強力な送風ファンを設置することで、
効率的に安定した冷風を送り続けることができます。
また、直列に数台設置することで、工場内で発生する
熱気や蒸気を効率的に換気扇まで送り続けることができます!
既存のスレート屋根に吹き付け塗装して断熱&防水&補修!
既存のスレート屋根に特殊なポリウレタン樹脂とアクリル樹脂3層を
30年以上前に建築した古い屋根に吹き付け塗装したところ、
断熱だけでなく、防水、補修効果も実現!
夏前の雨漏り対策と夏本番の熱さ対策の両方に繋がりました!
【暑さ対策の関連お役立ち情報】
>>空調の省エネ・環境改善に!夏本番の“今”こそ行うべき「工場の暑さ対策」
>>今からでも手軽にできる、すぐにできる!真夏の暑さ・熱対策 熱源の省エネ対策