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【セミナーレポート】 第5回「最新の静電気対策」

2018.02.09

徳島生産技術セミナーレポート

第五回 最新の静電気対策

2017.12.13(水) 開催

開催場所:大久保産業株式会社

講師:株式会社キーエンス 中村様

 

◆はじめに

生産現場において、静電気は様々なトラブルを発生させる原因となっています。製品に異物が付着する、搬送時に詰まる、粉末の充填時に粉が飛び出す、IC部品が破損するなど、生産効率に直結する深刻な問題に悩まされている方も多いのではないでしょうか。当セミナーでは静電気に関するトラブルを解決することを目標に、静電気の特徴と静電気対策のメリット/デメリット、様々な業界でのトラブル事例と解決法について詳しく解説します。

 

◆静電気とは?

→二つの物体の接触と分離(剥離)、摩擦、物体の変形、イオンの付着などにより発生します。

原子レベルで見ると、マイナスの電子とプラスの陽子の数が同じで電気的に中性(安定状態)である二つの物体が、接触し摩擦や剥離が起こる。すると片方の物体から電子が飛び出して“プラスに帯電”した状態になり、飛び出た電子はもう片方の物体へ飛び込んで、“マイナスに帯電”した状態になります。

 

◆帯電列

物質の性質によって、二つの物質を摩擦した時にプラスに帯電するかマイナスに帯電するかが決まります。

※帯電列中の位置関係が遠い物質ほど、摩擦した時の帯電量が大きくなる。

(温度や湿度、表面状態により、順位が入れ替わる場合があります)

 

◆静電気対策の基礎知識

[1]接地(アース)

導体を用いて電気を地面に逃がす方法です。

○メリット:アース線を配線するだけで簡単に除電対策が可能。

×デメリット:導体に対する対策で、ガラスやプラスチックなどの絶縁体には効果が無い。

〔注意点〕

アースをした導体に絶縁体が接していると、絶縁体の静電気が消えたように見えることがあります。これは、導体の内部では電荷が自由に移動できるため、帯電した絶縁体の電荷と反対極性の電荷が接地面に引き寄せられ、接地面においてプラスとマイナスが中和した状態になることで見かけ上除電できているように見えているだけなのです。(静電誘導)絶縁体の電荷は移動していないので、導体から引き離すと消えたように見えた静電気がそのまま残っていることがわかります。

◇アースを用いた人体の静電気対策

人体が導体であることから、右図のようなリストストラップを使用することが一般的によく知られている対策方法です。リストストラップは単にアースにつないでいるだけでなく、内部に数MΩの抵抗が配線されています。

◇リストストラップの働き

・人体をアースに接続することで人体の帯電を防止する。

・デバイスから人体への放電時に放電電流が大きくならないようにする。

 

◇絶縁体に対する静電気対策 「導電化」

絶縁体(樹脂の成型品やゴムなど)のままではアースで除電できないので、製品や材料そのものに導電性物質(カーボンや金属粉など)を混合したり、帯電防止剤を塗布したりして、電気が流れる仕組みを作る方法。

 

[2]環境による対策

一般的に、夏場は静電気を感じることが少なく、冬場はよく感じるものですが、これは周囲の湿度が大きく影響しています。空気中に含まれる水分が多いと、発生した静電気がすぐさま空気中の水分に対して放電するため、静電気として残りません。この自然現象を利用し、湿度を管理することで静電気対策が可能です。相対湿度65%以上で静電気が自然に放電しはじめるといわれています。

○メリット:静電気が発生した瞬間に放電することにより、静電気が発生しない環境を作ることができる。

×デメリット:全ての環境を管理することが困難。設備導入のコストが高い。

 

[3]徐電機(イオナイザー)による対策

イオンを生成し、イオンエアーを対象物に当て、イオンが持つ電荷により静電気を電気的に中和する方法。(イオン:原子あるいは分子が、電子を授受することによって電荷を持った状態)

〔コロナ放電によるイオン生成の概要図〕

コロナ放電のエネルギーにより、針先周辺の大気を電気的に分解し、イオン化します。

・針先に+の高電圧を印加すると、主に大気中の水分子が電離されプラスイオン化します。

・針先に-の高電圧を印加すると、主に大気中の二酸化炭素や酸素が-イオン化します。

針先への印加電圧と同極性のイオンが生成されるため、生成と同時にクーロン起因の反発力によってイオンは前方に押し出されます。このイオンを帯電物に与えることで除電を行なっています。この方法は、導体にも絶縁体にも効果的です。

 

◆異物付着

[1]導体への異物付着のメカニズム

プラスに帯電している物質(異物)が導体(製品など)に近づくと、導体内で静電誘導が起こり導体の表面にマイナスの電子が集まります。導体と物質と導体の間でクーロン力がはたらき、物質の質量よりもクーロン力が勝ると付着してしまいます。

導体(製品)に接続していたとしても、物質(異物)が帯電していると静電誘導によって付着してしまいますので、物質自信を除電しないと付着を防ぐことができません。

 

[2]絶縁体への異物付着のメカニズム

物質(異物)と絶縁体(製品など)の両方がそれぞれプラスとマイナスに帯電している場合はひきつけ合ってしまいますが、どちらか一方が帯電している場合はクーロン力が働かないためひきつけ合うことはありません。両方とも除電することが望ましいですが、どちらか一方を除電するだけでも十分効果が期待できます。

 

[3]効果的な除電方法

静電気によって付着した異物は、放置してもすぐに落ちるようなものではないため、原因となる静電気を取り除く必要があります。

静電気による異物付着を防ぐには、「エアパージ」+「電圧印加式の徐電機」が最も効果的です。

 

◆徐電機の基礎知識

徐電機に求められる能力には、以下の2点が挙げられます。

  • 除電するまでの時間 → 除電速度
  • どれだけ0Vを保持できるか → イオンバランス

除電速度が速く、かつイオンバランスの良い徐電機が、能力の高い徐電機であると言われています。

徐電機の能力は、電極針への高電圧の印加方法によって違いが発生します。

 

[1]DC方式(直流方式)

直流の高電圧を印加する方式で、高電圧を印加している時間分イオンが発生する。

○メリット:イオンの発生量が多く、除電速度

が速い。

×デメリット:片側のイオン(プラスかマイナスのいずれかのみ)しか発生しないため、イオンバランスが悪くなる。(逆帯電の可能性がある)

 

 

 

[2]AC方式(交流方式)

交流の高電圧を電極針に印加する方式。一般的に商業用電源を昇圧しているため、±のイオンの発生周期は50Hzもしくは60Hz。○メリット:プラスとマイナス両方のイオンが交互に発生するため、イオンバランスが良い。

×デメリット:電圧が±3kV以内のときはイオ

ンが発生しないため、DC方式よりもイオンの

発生量が少なく、除電速度が遅い。またイオンの発生周期が早く、発生したイオンの再結合により、対象物に近い所に配置しなければいけない。

 

[3]高周波AC方式

AC方式を変形したもので、圧電素子を用いて±2kVの高電圧を高周波で電極針に印加する方式。

○メリット:プラスとマイナスのイオンが高周波で発生するため、イオンバランスが良くなる。

×デメリット:印加電圧が小さく、イオンの発生量が少ないため除電速度は遅くなる。また電極針の汚れや摩耗によってイオンが発生しなくなる。

 

[4]パルスDC方式

DC方式のメリットである「イオンが発生し続ける」という点と、AC方式のメリットである「イオンが交互に発生する」という点を両方取り入れた電圧印加方式。

○メリット:イオンの発生量が多く、除電速度が速

い。プラスとマイナスのイオンが交互に発生するの

で、イオンバランスが良い。

×デメリット:バータイプの徐電機の場合、長手方向のイオンバランスが悪くなる。電極針の摩耗や汚れによって、除電速度やイオンバランスが大きな影響を受ける。

〔注意点〕

DC方式/パルスDC方式のバータイプの徐電機の場合、プラスとマイナスの高電圧を印加する電極針がそれぞれ別々になっているので、下図のようにプラスイオンだけの領域、マイナスイオンだけの領域が発生してしまいます。特にバーの両端付近では逆帯電が起こる可能性があります。

 

[5]パルスAC方式

1本の電極針にプラスマイナスそれぞれの直流の電流を交互に印加する方式で、DC方式、AC方式、パルスDC方式それぞれの利点を併せ持った印加方式。

○メリット:イオンの発生量が多く、除電速度が速い。プラスとマイナスのイオンが交互に発生するので、イオンバランスが良い。

×デメリット:特になし。

 

 

 

◆最後に、受講者様のリクエストにお答えしながら様々なトラブル事例と解決策についてお伝えしました。